二十一歳-白と黒のうた-東君平著

2011.02.04.Fri.08:00
 串田孫一の若かりし頃(40代?)の姿を初めて知る。(筑摩書房版 『博物誌』より)

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 何と素敵な!
今まで何となくでしか読んでこなかったが、これからは意識して読もうと心をいれかえる。






二十一歳-白と黒のうた-東君平著(1990新装版 サンリオ)


 白と黒のうた

ぼくのうた
白と黒のうたは
しろうとくろうのうたで
素人苦労のうたと書きます

 



        IMG_0002_convert_20110202233916.jpg

 もう一冊入手したのでお値段わずかに変えようと思い、棚から取り出して久し振りに読む。
東君平さんはその名を知らないでも、その作品を観たら「ああ!」と気づく人は意外に多いのではないだろうか。太い単純な線で、丸っとした目の男の子女の子が印象に残る絵だ。今は絵本でみる機会が多いが、この人の「おはなし」や「詩」のセンスは素晴らしく、個人的には愛蔵版「全作品集」なんかで出版されれば、と思う。
 この詩画集はまさに彼が21歳の頃の作品を集めたもので、絵の雰囲気はメジャーなものとは大分違ってビターな印象。



……当時は東京杉並の鷺の宮二丁目という所に住んでいた。住んでいたというよりそこに在ったといってもいいし死なないで生きていたといった具合だった。
近所にはまだ畑なんかもあったからイモなんかは夜のうちに掘ってきておいてアパートの共同台所でそれを洗って誰かの持物の包丁を無断で借りて輪切りにして、これも誰かの持物のフライパンをやはり無断で借りて、ついでにサラダ油も無断で借りてジャーッと早いとこバレないうちにいためて、新聞紙の上にころころとイモを置いて自分の部屋に戻って水と一緒にそれを喰って、窓を開いて空を見て、ひとりで「ああ、喰った喰った」とか何とかいって本当は情けないのに情けないなんてことはないような顔をして、ひとりでもう一度空を見て、そうするとゾーッと音がして寂しさがドーッとやって来て、頬がポロッと顔から落ちてくるんじゃないかと思えてくる。それが二十一歳で、確かに私の二十一歳で誰も助けてくれる筈もなくてそんなことは自分でわかっていて「そのうち大丈夫、がっちりがんばるよ」と自分にいいきかせて。

それでも月に一度くらいはラーメンが食べられる日もあった。
長島選手が天覧試合でホームランを打ったのを観たのはその月に一度のラーメンの日のラーメン屋のテレビで、私は夜店の帰りみちだったのでビニールの小袋の中に金魚を一匹入れて持っていたのを思い出す。
二十一歳。もう私の上には戻って来ない過去となってしまったが、懐かしいようなもう二度となってみたくないような、それでいてもう一度戻ってみたい歳だ。……  
                   
                                              あとがきより    




「二十一歳」という詩。
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「二十一歳」の挿絵。
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人、動物、植物、川の流れにいたるまで全てに表情があるように思う。見飽きない。



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