『サン・トワ・マミー』が歌えない。

2011.03.18.Fri.00:20


 真夜中のほとり。
思い立って、たことねぎの入った竹輪を一本、焼く。
珈琲のお茶うけにそれを食す。
雪が降るのを見ていると、急に越路吹雪。



 大学1回生のとき、学校の先輩から越路吹雪の『ベスト・セレクション』というCDアルバムを貰った。その人からは、他にも柴田翔「されどわれらが日々」などの本も。普段行かないような、高級ではないけれど、変わった食べ物屋さんに何回か連れて行ってもらったりもした。「おいしそうに食べるから」というのが、その理由だった。

 家が近かったので遊びに行ったときに、お礼にカッターシャツにアイロンをあててあげると、「うまい、うまい」と喜んで、次に行くと「用意しといたよ」とシャツを渡されたこともある。Y’sの好きな人であった。

 先輩はジタンとシャネルのエゴイストの混ざった匂いで、いつの間にか私の臭覚の記憶の箱に収められていて、会うこと久しくなっても、街中で同じ匂いに出くわして、はっと振り返ること幾度かある程だった。

 「俺は元々愛人の子で―」が口癖で、「親父に会う時って、おふくろがやっぱり綺麗になるんだよな」それがわかるんだよ子供ながらにも、というような話も何度か聞いた。そんなときの先輩は眼光の鋭さ失せ、ぼんやり優しい顔つきをしていて、その度に私はこの人の母親という人の表情をこっそり想像してみたりした。


 「(好きだった人に)ふられたから」と、CDをくれた。「でも、お前にはまだ『サン・トワ・マミー』は歌えないよ」(経験相応でないということ)という言葉もついでに貰う。
いまだに私は、歌える気がしないが。

 あのあと先輩は、立派に?ゲイとして生きていけたのだろうか。

 
 そんな思い出のコーちゃんを聴く夜。



 昔の話ばかり。春ですね。



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